困難女性支援法 基本方針案に「年齢、障害、国籍問わない」と明記

2023年0201 福祉新聞編集部

 2022年5月に成立した「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」(以下、新法)に基づく基本方針の原案が1月20日、判明した。同法の支援対象者について「年齢、障害の有無、国籍等を問わない」と明記した。こどもや高齢者、障害のある女性を一律に支援対象から外すことのないようくぎを刺した形だ。 

 

 厚生労働省が有識者会議(座長=戒能民江・お茶の水女子大名誉教授)の議論をまとめ、同日、パブリックコメント(意見募集)を開始した。2月18日まで受け付け、3月中に告示する。基本方針を踏まえ、都道府県には施策の実施計画を作る義務が、市町村には努力義務がある。

 

 新法は売春防止法から婦人保護事業を抜き出して刷新したもの。売春するおそれのある女性を保護し更生させるのではなく、「性的な被害、家庭の状況、地域社会との関係性その他の事情」により困難な問題を抱える女性の福祉の増進を図る。施行は24年4月1日。

 

 その実効性を担保する上での最大の課題は、支援対象とする女性の捉え方だ。

 

 従来、障害のある女性は障害者福祉の制度に委ねるなど「他法他施策の優先原則」があったが、19年7月、厚労省はこの原則を通知から削除。個別のニーズを見極めて婦人保護事業を活用するよう促し、今回の基本方針(案)もその考えを踏襲している。

 

 例えば、都道府県が設置する「女性相談支援センター」(現在の婦人相談所)が一時保護する対象者の像を8項目に整理。その一つは、「心身の健康の確保及び関係機関による回復に向けた支援につなぐために保護することが必要と認められる場合」とした。

 

 病気や障害のある女性について、生活を取り戻すといった意味の「回復」を支える考えだ。また、「一時保護しないと生命や心身の安全が確保されないおそれのある場合」も対象者とした。将来の危険性や一時保護後の中長期的な支援も視野に入れた形だ。

 

 従来の婦人保護事業は懲罰的な要素が強く、支援を必要とする女性の抵抗感が強かった。また、他法他施策の優先原則もあり、一時保護をはじめとしたサービス利用につながりにくかった。

 

 厚労省はこれらを改めるため、24年4月から5カ年の取り組みの考え方を基本方針として定める。一時保護の要件、女性自立支援施設(現在の婦人保護施設)の居住環境や職員の配置基準は通知ではなく厚労省令に位置付け、改善を図る。

 

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